前ページからの続きです。
前ページまでは、日本のほとんどの方が「楊式」から入るということや、「楊式」や「陳式」とはどういうものかといったことを簡単に書きました。
(各流派の詳細については、検索してみてくださいね! 動画サイトで流派ごとの雰囲気の違いを観てみるのもいいと思います。)
ここでは、じゃあ、「楊式」と「陳式」のどっちがいいのか? ということについて書いておこうと思います。
じゃあ、「楊式」と「陳式」のどっちがいいのか?
結論から先に書くと、私自身はどっちでもいいと思っています。
別に「投げやり」に言っている訳ではなく、(^^;)
「どちらも面白いけれど、自分の目的に合えば、どちらでもいい」と思っています。好みの問題です(^^)
今だからこそ思うのですが、太極拳をはじめようかなという方は、大きく分けて二種類おられるようです。
1. 健康上の問題から、何か軽めの運動をしたいという方。
2. 迫力のある太極拳をやってみたい方、
また、カンフー映画などにあこがれて、中国武術をやってみたいという方。
圧倒的に多いのが、「1」の方々だと思います。私も「1」の方でした。
自己紹介のところでも少し書かせていただいたのですが、私は数年前に体調が悪かった時があり、なんとかならないものかと悩んでいました。やはり運動する習慣を身につけた方が良さそうだと思い、太極拳の教室へ行ってみようと思いました。そして体調を改善させるためのヒントをつかみたいということでした。その後は少しずつ体調が改善され、心身の健康に関して自分なりに理解を深めてきました。心身の健康維持の方法と太極拳の関係については本当に興味が尽きません。
前回にも取り上げさせていただいたポーキュパインさんも、不整脈を患っていたお母様が太極拳をはじめられて、症状が改善されたと言われていました。
日本では太極拳人口の大多数が年配の方だと想像してますし、おそらくポーキュパインさんのお母様のような方も、多くおられるだろうと思っています。また、病気の予防のために通われている年配の方も多そうですし、私のような若い世代の方でも、体調管理のために通う方も増えてきていると想像してます。
私が太極拳をはじめた時、どんな流派があるということすら知りませんでした。
なんとなく太極拳に興味を持ち続けていたものの、知識も何もないまま、直感的に選んだ教室へ見学に行き、自分に合いそうだなと思ったので通いはじめました。
何かしら、自分の体調管理のための手がかりがないかと思って、分からないなり教室通いを続けました。型がなかなか覚えられないし、動きにもなかなかついていけませんでしたが、本当に体調を何とかしたいと思っていたので、やめようと思ったことはなかったです。
このように、はじめは自分の体調管理のためだったのですが、しばらく続けていくうちに、だんだん意識がかわってきました。
その当時はまだ言葉でどう表現したらいいのか全然分からなかったのですが、太極拳を続けるうちに太極拳そのものに面白さを感じるようになってきたようでした。
今振り返ってみて、私がとても運がよかったのは、私が通いはじめた教室が「陳式」を主軸に教える教室だったことです。
前ページでも少し書きましたが、「陳式」は「楊式」とだいぶん趣が違っていて、跳んだりはねたりする要素があり、型自体に緩急があって武術色が濃く、カッコいいんです!
はじめは型もぜんぜん覚えられなかったのですが、半年くらい経った頃から、少しずつ頭にはいってきました。だんだん「太極拳ってカッコいいな!」 と思うようになってきました。
もし私がゆったりとした「楊式24式(簡化太極拳)」だけを教えるような教室に通っていたら、今のように太極拳を続けていたかどうか分かりません。
はじめて学んだ型が「陳式」だったことを、今になってすごく運が良かったと思う理由は、もう1つあります。
というのも、私の想像ですが、日本ではまだまだ「陳式」の教室が少ないはずだからです。
いきなり飛び込んだところが、たまたま「陳式」を教える教室だった。今になって本当に運がよかったと思っています。当時は、自分が陳式をやっていることがどういう意味を持っているのかもまったく知りませんでした。練習を重ねていくうちに、その恩恵を感じるようになったのです。
日本にも太極拳がだいぶん普及したこともあって、たぶん日本全国どんな地域にも太極拳教室はあるはずです。でも、そのほとんどは「楊式」を主に教えている教室だと思います。
前述のように、私は陳式の緩急ある動きを通して、太極拳の魅力に引き付けられました。だから、もし私が「楊式」だけを教えている教室に通っていたとしたら、いまのように太極拳を続けていたかは分かりません。もしかしたら、続けていたとしても進歩が今よりも遅かったかもしれません。
最近はカンフー映画の影響などで、若い世代の方々も中国武術を習いたいという方が増えているとききます。(「陳式」や「長拳」などの、激し目の動きが特徴のもの)
テレビでも時々紹介されるようになってきているようですし、専門雑誌なども少しずつ増えてきているようです。
以前、コメントいただいたポーキュパインさんも言われてました。
>> 昨年(2008年)NHKの趣味悠々で太極拳の特集を見て自分もやってみたかったからです。
>> 特に渡辺俊哉先生のかっこよさにあこがれたのが一番だと思います。
>> 確かあれは陳式と楊式をミックスしたような感じでしたね。
とのこと。
ポーキュパインさんが言われるように、最近はNHK教育の番組などの影響もあって太極拳に興味を持つ若い方が多いようです。確かに渡辺俊哉さんの番組は、カッコ良く紹介されていたようですね(^^)
私はほんの少しチラッと見ただけなのですが、初心者の方には難し過ぎる内容だなあというのが、私の教室でも話題になってました。
(初心者の方でなくても難しいと思われます(^^;) あそこまで動けるようになるには、結構な年数練習しないと難しいですね。私もまだまだです(^^;)頑張ろーっと。。 )
NHK教育でよく出演されている陳静さん(中国武術家)と渡辺さんは確かご夫婦で、大阪府の南部のあたりで教室をされているとききましたが、たぶん若い受講者も多いことと思います。
太極拳の教室は日本全国に無数にありますが、一言に「太極拳教室」といっても、先生がどのように型を解釈してどのように教えているかによって、同じ流派(例えば楊式24式、あるいは陳式)であってもまったく別物のような感じになるので、そのあたりが教室選びの難しいところです。
最初のフィーリングが合うかどうかというのは、結構大事かもしれませんね。特に初心者の方の場合はそのあたりの知識もなく入会されてくる方が多いので、教室のミスマッチをできるだけ避けるためにも、色々な教室を見学されてから入会されるのがいいと思います。私もはじめは全く知識がないまま教室見学に行き、ここなら続けられそうだなとフィーリングで決めました。(^^) 結果的にそれがよかったです。
コメントいただいたポーキュパインさんも言われてました。ジャッキー・チェンやジェット・リーにあこがれて入門してきた若い方が、太極拳のゆったりした動きに幻滅してやめてしまうことが多いようだ、、と。確かに教室の雰囲気とのミスマッチがおこってしまうのは残念なことですね。でも、そういった動きの激しい中国武術を教える教室がまだまだ少ないのが現状のようです。
日本の太極拳の環境は、楊式24式をメインとしてゆったりと動く健康太極拳を教える教室が圧倒的多数だと思うので、武術的な要素の濃い本式のカッコいい太極拳を期待している方には物足りないかもしれませんね。(^^;)
動画サイトなどを見ていても、そういった武術太極拳の大会の様子などの動画を見ることが出来ますし、カッコいい太極拳に憧れる方が増えるのも分かるような気がします。武術太極拳の教室も探せばかなりあるようなのですが、まだまだ圧倒的に少ないと思います。
こういったミスマッチが起こるのは、本当に残念ですね。。
「陳式」を通して「太極拳ってカッコいいな!」と思った私は、そういった方の気持ちが分からなくもないです。若い世代の方なら、もっと緩急のある、動きの激しいものをやりたいというのは、当然のことかもしれませんね。
こういった意味もあって、私ははじめに「陳式」から学べたことを、とても幸運に思っています。
ポーキュパインさんも言われていましたが、若い元気な太極拳愛好者を増やすには、もっと色々な特色の教室が増えることが必要かもしれませんね(^^;)
今後に期待したいところです!
もし武術的な要素の濃い本式のカッコいい太極拳を学びたい場合は、遠い教室でも通う価値はあると思います。そういった教室では競技会に出たりすることも多いようなので、将来的に太極拳の講師になりたい方などは、そういった教室に通われることが多いようですよ! ただ相当練習は厳しいみたいです(^^;) 通われている方の意識が相当高いようなので、単なる習い事という意識は捨てた方がいいようです。
(私の教室に入会された方が、以前そういった教室にかなり長い間通われていたので、裏話などを少し教えてもらいました。)
カンフーや少林寺拳法のような武術と太極拳が本質的にどう異なるのかという面は私もよく分かりません。
(伝統的な太極拳も本来は武術の1つであり、一説では素手で戦う最強の武術であるときいたことがあります。)
ただ、私が思うのは太極拳はカンフーなどのような対戦的な武術として学ぶものではないような気がしてます。上手く説明できてませんが、自分自身の身体の中に宿っている力の流れのようなものを発見したり、それを訓練によって育てていくようなものではないかなあと私は思っています。
私は比較的動きの激しい陳式とゆったりした楊式、気功や長拳を教室で習ってきました。それを通して個人的に思うのは、呼吸の練習や身体を緩めること、下半身の動かし方、重心を安定させる練習などの太極拳の基本の要素を学ぶことが目的であれば、型の種類はあまり重要ではないのではないかということです。
ただ色々な型を学んでみて比較することで、気付きや理解が深まるという面もあると思います。色々な型を長い年月をかけて少しずつ学んでいくこともまたいいことだと思いますよ!(^^) 私はどちらかというと色々なものをかじりたい性格なので(笑)、今後色々な型などにも挑戦したいと思っています。
個人的には、前ページでも書いた通り、いくら激しい動きの型を練習するにしても、太極拳の本質的なことを学ぶ姿勢については、忘れてはいけないのではないかとも思っています。
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